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「てにをは」の正しい使い方とは?言葉同士をつなぐ重要な助詞

この文、てにをはがおかしいよ

そんな言葉を言われたり聞いたりした記憶はありますか?「てにをは」は日本語の「助詞」を意味する言葉です。「てにをはがおかしい」とは、「文章の助詞の使い方が変」を意味します。

ところで、なぜ「てにをは」が助詞を意味するのでしょう。その理由をお伝えし、次に、文章にふさわしい「てにをは」を選ぶ際の考え方について見ていきます。

「てにをは」は日本語の助詞の総称

日本語には多くの助詞があります。その数は、主語につける「が」・「は」や、方向を示す「に」・「へ」など15種類以上にもなります。

「てにをは」これらの助詞の代表四文字を取って付けられた呼称と思われがちですが、そうではないのです。「てにをは」は、古くは約千年も前の平安の時代から、独立した言葉として存在していました。

「てにをは」は漢文由来の言葉

「てにをは」の名称は、漢文を読む時に補って読む文字「ヲコト点」に由来しています。「ヲコト点」は漢字の四隅にふられた文字で、平安時代、「ヲコト点」を左下から右回りに読んで「てにをは」と呼ぶようになったと言われています。

 ヲコト点

以来、「てにをは」は助詞や助動詞などの品詞名として浸透していきましたが、明治時代以降は次第に品詞名としての使用はされなくなっていきました。現在では「助詞・助動詞の別称あるいは総称」と定義つけられています。

どの助詞を使うかでニュアンスが変わる

似たような役割の複数の助詞が候補に浮かぶ時、どれを使っても大差ない場合もありますが、伝わるニュアンスに違いが生じる場合があります。例文で比較しながら見ていきましょう。

私「が」/私「は」

例1

打ち合わせに行きます。

打ち合わせに行きます。

私「が」と言うと、「誰が」が一番の関心事となり、「他の人ではなく、この私です」の気持ちが押し出されます。

一方、私「は」と言うと、文章の本題は「誰が」ではなくなります。例えば「私の予定はこうです」と伝える状況であれば、適切な助詞は「は」です。

ダチョウ俱楽部の鉄板ネタの

A:私が行きます!

B:いや私が行きます!

C:いやいや私が!!

A&B:どうぞどうぞ!

このセリフ中の、私「が」私「は」に変えてしまうと、無意味な会話になりますね。「が」じゃなければ笑いが成立せず、大きな違いがわかります。

ではもう1つの例です

例2

餃子おいしい。

餃子おいしい。

餃子「が」と言うと、「どの料理も言うまでもなくおいしいが、とりわけ餃子がおいしい」というメッセージが伝わります。

対して、餃子「は」と言うと、「餃子はおいしい」の後に「けど…」と逆説的に続きそうなニュアンスが否めません。文の受け手に「ん?じゃあ八宝菜はおいしくないのかな?」と、不穏な思いを抱かせることにもなります。

家庭で、料理を作ってもらった人が褒めるつもりで例2のように「餃子「は」―」と言うと、「餃子以外はマズかったって言いたいの?」と思いがけず作った人の逆鱗に触れる恐れもあります。

料理を褒める時のためにも、助詞によるニュアンスの差は認識しておきたいですね。

パスタ「が」/パスタを「を」

次は、実は文法的に間違っている例です。

例3

パスタ食べたい。

パスタ食べたい。

願望を表す「~(し)たい」が語尾にくる時、目的格の助詞としては「が」が正しく「を」は間違いです。

パスタ「を」「を」も目的格の助詞ですので、「を」を使う場合は、「パスタ食べたいと思う。」とするのが正しい文章です。文末の「と思う」が省略されても通用するところから、文法的に間違いだと感じなくなったようです。

緑茶「を」/緑茶「で」

例4

緑茶お願いします。

緑茶お願いします。

どちらが、相手により良い印象を与えるでしょうか。

緑茶「を」と言う方が、素直に自分の本心からお願いしているような好印象を持たれます。

緑茶「で」と言うと自分の要望を謙虚に伝える姿勢が良さそうに思えます。しかし「で」には「仕方ない、これいいか」と妥協するニュアンスが含まれるため、相手に対し失礼な返答になります。

それよりは「~お願いします」と言う方が美しい言葉として響きます。

そうめん「で」/そうめん「が」

例5

そうめんいい。

そうめんいい。

例4と類似の例です。例4・例5の「で」は、妥協・投げやりなどマイナスの印象を相手に与えます。

それに対し、そうめん「が」と言えば、明るく可愛くリクエストしている雰囲気が感じられませんか?

「夕飯何がいい?」と料理を作る人に聞かれた際、強く主張せず遠慮のつもりで、そうめん「で」と答えると、「「で」って何!」と相手を不機嫌にさせるかもしれません。「「で」いい」は避けましょう。

もちろん誰に対しても、どのような状況においても、無用にへりくだるより、まっすぐ素直な気持ちを伝える表現を使ってください。

そちら「に」/そちら「へ」

例6

そちら向かう予定です。

そちら向かう予定です。

この場合の「に」「へ」の差はわかりづらく、違いを把握するには少し難度が高めかもしれませんが、比べて見ていきましょう。

「に」を使うと、目的地点にはっきりフォーカスしているイメージがわきます。ピンポイントに、目的場所「に」到着する動きを表現できます。

対して「へ」は、狭い到着点を示す意味は薄く、相手のいる場所の方向「へ」移動するイメージになります。

では違いがわかりやすい例をご覧ください。

例7

100m地点到達した。

100m地点到達した。

いかがですか。例6と違い、「に」を用いている方がしっくりきて、「へ」には違和感を覚えませんか?「に」を用いた文章では、ピンポイントに「100m地点」に人(物)が到達している様子が鮮明に浮かびます。

けれど、「へ」を使った文章では到達したイメージを鮮明には感じられず、ぼんやりした印象を受けますね。

「てにをは」を正しく使うために

助詞「てにをは」を正しく使う力を養うには、正しく書かれた文章に日常的に触れる習慣が効果的です。

良書を読む

小説ならば美しく流れるような文章に引き込まれつつ読み進められますし、論説のような堅い内容の書物でも自己啓発本でも役立つでしょう。ジャンルにこだわらず多くの文章に触れるほど、感覚で「てにをは」を正しく選ぶ力が身についていきます。

新聞を読む

新聞を読みましょう!定期購読していれば、毎日新鮮な記事の文章を浴びるほど読めます。様々な分野の記事が詰まっていますし、時代に応じて文章表現や語句もアップデートされていくので、偏りのない文章が読めます。広く情報を網羅しながら、正しい「てにをは」を扱う力が高められます。

まとめ:「てにをは」を正しく使って、正しく伝わる文章を作ろう

助詞「てにをは」は、日本語特有の品詞です。使い分けられる力が向上すると、「てにをは」の選択を考えるのが楽しくなりますよ。繊細な気持ちを表すのに有用な「てにをは」を正しく使い分け、正確に伝わる文章を作りましょう。

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