今の私たちの暮らしは、たくさんの「ユニバーサルデザイン」に囲まれています。では「ユニバーサルデザイン」とは何なのでしょう?どこにあるのでしょう?
この記事では「ユニバーサルデザイン」の意味やその目的、そして身の回りにどのような「ユニバーサルデザイン」があるのかを紹介します。
「ユニバーサルデザイン」とは
ユニバーサルデザインの言葉や考え方は比較的最近生まれました。まず1960年代に障がいを持つ人々の生活を守ろうとする考えがデンマークで広がり、それをもとにアメリカの男性が確立させた思想です。詳しく見ていきましょう。
「ユニバーサル」は「普遍的な」「全体の」を意味する英語
ユニバーサル(universal)とは英語で、「普遍的な」「全体の」「万人に通じる」などが主な意味です。「普遍的」の意味を少し易しく言いかえると「全ての人・物事に共通している」となります。
そして「ユニバーサルデザイン」は「全ての人のために作るデザイン」、そして「このデザインをコンセプトにして作られたもの」を意味します。障がいの有無や年齢・性別・国籍などの違いに関係なく、誰でも安全・快適に利用できるよう作られるものが「ユニバーサルデザイン」と呼ばれているのです。
現在は製品だけではなく、環境・設備・サービス・情報など、幅広いジャンルにおいて採用されており、世界に広く浸透している言葉になっています。
なお、ユニバーサル(Universal)とデザイン(Design)の頭文字2文字を取って「UD」とする表記もよく使われます。
1980年代のアメリカで始まった考え方
1980年代、アメリカのロナルド・メイスという人によって「ユニバーサルデザイン」の言葉が作られました。
ロナルド・メイスは、車椅子を使う障がい者でした。障がいを持つ人々が、あらゆる分野で差別を受けないように、そして不便さをなくすために、「ユニバーサルデザイン」の考えを打ち出しました。
日本でもその後1995年頃からユニバーサルデザインという言葉が知られ始め、広く企業にも取り入れられるようになっていったのです。
ユニバーサルデザインの7原則
ユニバーサルデザインには7つの原則とされるものがあります。この原則に従って設計された製品や施設などが、ユニバーサルデザインと認められます。
7つの原則とは次のように決められたものです。
1.公平性
子どももお年寄りも、簡単に利用できるよう設計する必要がある。
2.柔軟性
一例としては、身長の高い人・低い人、それぞれに対応した高さの洗面台の設置など。
3.単純性と直感性
使う人の知識や経験に関係なく、直感的に使い方がわかるもの。
4.安全性
うっかり使い方を間違えても、怪我や事故を防ぐ機能を備える。年齢や障がいの有無、言語や文化の違う外国人など、様々な人の利用に対応できる。
5.認知性
使う人の視覚・聴覚などの力に関係なく、使い方や重要な情報がわかるように設計する。文字やイラスト、音声アナウンスを使うなどの工夫。
6.効率性
「身体への負担をいかに少なくするか」に着目し、無理のない姿勢や少ない力で楽に使えるよう設計する。
7.快適性
使う人の体格や姿勢、車椅子や荷物などに左右されず、使いやすいスペースを確保する。
参考元:MIRAI REPORT/TWIST/一般財団法人家電製品協会
身の回りにあるさまざまなユニバーサルデザイン
普段私たちが何気なく使っている文房具や洗剤の容器など、いつもそこにある物にも、実は「ユニバーサルデザイン」の工夫が取り入れられています。
そして外に出れば、駅やさまざまな施設・店舗、道路にも「ユニバーサルデザイン」がたくさん施されています。どのようなものがあるでしょうか。見ていきましょう。
生活の中で使う道具7選
1.ライン・ハンディペーパーカッター〔長谷川刃物:紙キリムシ〕
マウスの形をしたカッターです。マウスの上に手を乗せるようにして持ちます。
ボタンを押すと刃の先端が紙につき、紙が切れます。手の動きに回転カッター刃がついてくるので、手首を無理に動かさなくてもスムーズにカットできます。
2.コフの爪切りGriff〔ヨシタ手工業デザイン室〕
妊婦さんや体が硬い人など前にかがむ動きが困難な人でも、あまり無理な姿勢を取らずに爪切りができます。人の爪を切る時にも便利です。
軽く長い形状のため、テコの原理で力の弱い人でも楽に切れる設計です。角度調整や力加減がしやすい作りで、優れたユニバーサルデザインであるとの評価を受けています。
3.ファンシーカップ〔HAKUSAN〕
人の手がフィットするように突き出た突起があり、反対側には窪み(くぼみ)がついています。しっかりと握れて、手からすっぽり抜け落ちる心配はありません。小さな子どもから高齢者、目の不自由な人も安心して使えます。
持ちやすさを考えたデザインと実用性を兼ね備え、手にしっくりなじむカップです。
4.メリット・ポンプシャンプー / コンディショナー〔花王〕
シャンプー容器の側面にきざみがあり、触覚でシャンプーかコンディショナーかを見分けられます。ポンプキャップの上の、押すときに手で触る部分にもきざみがついていて、目をつむったままでもわかりやすくなっています。
5.360゜歯ブラシ〔VIVATEC〕
360°型の円状歯ブラシで、健常者・高齢者・障がい者など、誰にでも簡単に使えるようにできています。子ども用・大人用・介護用・ふつう・やわらかめなど、使う人の口の状態に合わせて数種類が発売されています。
6.ルービックキューブ・UDデザイン〔メガハウス〕
1974年に誕生したオリジナル版は6面全ての表面がなめらかでしたが、ユニバーサルデザイン版では、白色以外の5色に異なる凹凸をつけています。目では見えなくても、指で触ってそれぞれの面を区別し揃えて楽しめます。
7.体組成計インナースキャンVoiceBC-202〔タニタ〕
測定時に、音声で操作手順や測定結果を知らせてくれます。計器本体は幅広に作られているので、上に乗った時に体が安定していられます。
駅や店などの施設や建物で見られるデザイン7選
1.点字ブロック
視覚に障がいのある人が足裏や杖などで触れて、道路・通路や床の進行方向や「この先段差あり」などの情報が認識できます。
2.ピクトグラム
皆がよく知っている「非常口」のマークもピクトグラムです。言語がわからなくても、パッと見ただけで「トイレ」「飲食スペース」などの情報が伝わります。2色のコントラストをはっきりさせているのも、見る人にわかりやすくするための工夫です。
3.電車内車椅子優先スペース
電車内で車椅子やベビーカー用に確保されているスペースです。また、車椅子やベビーカーで利用している人がいない時ならば、大きなキャリーバッグを持った人なども利用できます。
出典:Pinterest
4.ノンステップバス
車体の床面を超低床構造にして、昇降ステップをほとんどなくしたバスです。地面と昇降の高さの差が小さくなり、高齢者や小さな子どもでも乗り降りが楽になります。
5.音響付き信号機
視覚に障がいのある人や高齢者などに、信号が青に変わったのを音で知らせる信号機です。「カッコー」「ピヨピヨ」などの音が鳴るものと、音楽が流れる「メロディ式」があります。
また、押しボタンのところで「信号が青に変わりました」と声で知らせる信号機もあります。
6.シャワートイレ
初めは障がい者のために開発されましたが、多くの人が快適さを感じたため、障がい者・健常者に関係なく社会に普及しました。
7.幅の広い駅改札口
車椅子利用者も健常者でも、誰もが余裕を持って通れる広い幅を確保して設置されています。
これらのほかに、特に駅や空港など多くの人が行き交う空間には、多数のユニバーサルデザインが取り入れられています。天井・壁・床・照明など、「これも!?」と驚く所に施されている例をこちらでご覧になってみてください→鹿島建設
安全で快適な暮らしのためのユニバーサルデザイン
家でも外でも、たくさんのユニバーサルデザインに囲まれていたことに気づきましたか?
障がいを持つ人のために生まれたユニバーサルデザインですが、今では誰もがより安全で快適に生活できるためのものとして作られています。また、見た目の美しさやかわいさや周囲との同調性にもこだわるなど、日々進化しています。