どんな内容の計画なんだろう?
ムーンショット計画という言葉を聞いて、このような疑問を抱いている方も多いのではないでしょうか。
実は私たちの将来に大きく関わっているんです!
現時点ではニュースなどでも取り上げられる頻度が少ないため、初めて聞いた方もいるでしょう。
本記事では現役Webライターである私が、ムーンショット計画の意味や由来、概要と目的について徹底的に調べました。
さらに、ムーンショット計画が策定された4つの背景と9つの目標についても詳しく解説します。
ムーンショット計画は私たちにとって身近な問題なので、この記事を読んで興味を持ってもらえたら幸いです。
ムーンショット計画の意味
ムーンショット計画は、内閣府が掲げた人々の幸福の実現を目指した壮大な計画です。
2020年1月に開催された「第48回総合科学技術・イノベーション会議」で議論されました。
2050年までに挑戦的な技術開発を支援し、少子高齢化による労働問題や大規模な自然災害の被害の軽減などの困難な問題を解決します。そして人々が幸福でこころ豊かに生活できる社会を目指しています。
ムーンショット計画の由来
ムーンショット計画は「月へとロケットを打ち上げる」様子が由来となっています。
1961年、アメリカのジョン・F・ケネディ大統領が発表したアポロ計画。
これは「1960年代が終わる前に人類を月面に着陸させ、無事に地球に帰還させる」計画であり、1969年にこの計画は目標通りに達成されました。
実現は困難とされていましたが、成功すれば大きな影響を与えると期待される壮大な計画であったため、「ムーンショット型」と名付けられたそうです。
2016年には、当時のApple Computer社の元CEOであるジョン・スカリー氏が著書「ムーンショット」を出版しました。
その中で「将来を描く、斬新で困難だが、実現によって大きなインパクトがもたらされる、壮大な目標・挑戦」と紹介しています。
「ムーンショット」は今では上記の意味のビジネス用語として使われているそうです。
ムーンショット計画の概要
2050年までの目標達成を掲げているムーンショット計画ですが、2030年を一つの到達点として計画が進められているようです。
具体的な内容は、以下の3点です。
- 誰もが多様な社会活動に参加できるサイバネティック・アバター基盤を作る
- サイバネティック・アバター生活を提案する
- 誰もが夢を追い求め、健康不安なく100歳まで楽しく生きられる社会を実現する
膨大な費用と時間がかかるため実現は困難と言われていますが、いずれ実現が可能な魅力のある問題という見方がされています。
さまざまな研究と試行錯誤の結果、2030年の実現は十分可能であると内閣府は公表しています。
私たちにとっても大きな期待をもてる内容でしょう。
ムーンショット計画の目的
ムーンショット計画の目的は、「人々の幸福(Human Well-being)」の実現です。
- 人の能力拡張による人々が多様なライフスタイルを追求できる社会の実現
- サイバネティック・アバターの活用による国際的コラボレーションのプラットフォーム開発
- 空間や時間を超えた新産業の創出
- 生活データに基づき新しい知識集約型産業や新興企業の創出
- 人の能力拡張技術とAIロボット技術の活用による新サービスの創出
人々が幸福で豊かな生活を送れるようにするために、さまざまな技術を開発していく必要があるようです。
ムーンショット計画が策定された4つの背景
ムーンショット計画は4つの背景をもとに策定されています。
ムーンショット計画の4つの背景
- 少子高齢化
- 持続可能な社会の実現
- 社会の多様化
- 技術革新
日本は少しずつIT分野に力を注いできていますが、現状はアメリカ企業による技術開発がほとんどです。
それだけでなく、少子高齢化問題や環境汚染問題、海外の技術革新に対する遅れなど、さまざまな課題があります。
このような問題に対して、科学技術・イノベーション政策を推進するために内閣府は「総合科学技術」を立ち上げました。
解決が困難と言われているさまざまな問題もいつか実現可能になると信じて、国は総力を上げて問題解決に取り組んでいます。
ムーンショット計画の4つの背景について、以下で詳しく説明していきます。
①少子高齢化
日本では出生率の低下や健康寿命の延長が影響して、少子高齢化が急速に進んでいます。
これは日本と同様に人口変動している先進国やアジア諸国周辺でも共通の課題なので、日本はこの問題に真摯に向き合っていく必要があります。
また現在の日本は「人生100年時代」に突入しています。ライフスタイルの多様化や定年退職後の生き方など、私たちの生活も大きく変化してきました。
こうした価値観や生活様式の変化に対応するために、内閣府はムーンショット計画として指針を示しています。
②持続可能な社会の実現
「人生100年時代」と言われていても、現実は貧困や紛争が続いていたり、新たに気候変動や感染症が発生したりするなどの問題も出てきました。
このような問題が続くと、私たちは安心して日々の生活を送れる保証ができなくなるでしょう。
ムーンショット計画は、課題を解決に導いて持続可能な社会を実現できるものと期待されています。
③社会の多様化
異なる多様な文化的背景やさまざまな価値観、多様な選択肢など、社会はあらゆる分野で多様性を受け入れようとしています。
しかし実現にはまだ時間がかかるでしょう。
ムーンショット計画は、社会の多様性の実現にも大きな役割を果たすと考えられています。
④技術革新
テクノロジーの進化はとても速く、日々新しいイノベーションが誕生しています。
「新開発品やサービスを事業化する」イノベーションや、「新しい価値から収益を生み出す」イノベーションを広く社会に行き渡らせる目標も考えられています。
欧米や中国では、破壊的イノベーションの創出を目指して、これまでには想像も着かないような野心的な構想や困難な社会問題の解決を掲げてきました。
そして日本とは桁違いの投資規模でハイリスク・ハイインパクトの挑戦的研究開発を強力に推進しています。
そうした中で、日本発の破壊的イノベーションを創出し、これまでの技術の延長にない、より大胆な発想に基づく挑戦的な研究開発が必要となっています。
ムーンショット計画の9つの目標
出典:内閣府ホームページ
「人々の幸福(Human Well-being)」の実現を目指すために、ムーンショット計画のすべての目標が掲げられています。
将来の社会問題を解決するために、人々の幸福で豊かな暮らしの基盤となる以下の3つの領域が決められています。
- 社会:急進的イノベーションで少子高齢化時代を切り拓く
- 環境:地球環境を回復させながら都市文明を発展させる
- 経済:サイエンスとテクノロジーでフロンティアを開拓する
ムーンショット計画には、3つの領域からさらに具体的に9つの目標があります。
具体的な9つの目標
目標1:身体・脳・空間・時間の制約からの解放
目標2:疾患の超早期予測・予防
目標3:自ら学習・行動し人と共生するAIロボット
目標4:地球環境の再生
目標5:2050年の食と農
目標6:誤り耐性型汎用量子コンピュータ
目標7:健康不安なく100歳まで
目標8:気象制御による極端風水害の軽減
目標9:こころの安らぎや活力を増大
それぞれの目標について、ここから詳しく解説していきます。
目標1:身体・脳・空間・時間の制約からの解放
目標1は、「2050年までに、人が身体や脳、空間や時間の制約から解放された社会の実現」です。
アバターやロボットの技術開発によって人の能力を拡張して、誰もが制約から解放されて社会活動への自由な参加を目指しています。
具合的には、人に代わって動くロボットや3D映像を使うサイバネティック・アバターや、サイバー・フィジカル空間を活用します。
そうして誰もが平等に自由に活躍できるための物を開発していくそうです。
目標2:疾患の超早期予測・予防
目標2は、「2050年までに、超早期に疾患の予測・予防ができる社会の実現」です。
疾患発症のメカニズムの解明によって、アレルギーや感染症などの社会問題の解決や医療技術の発展を目標としています。
また人の生涯にわたる身体の機能の変化を「臓器間のネットワーク」として捉え、病気が発症する前の「未病の状態」から「健康な状態」に戻す方法の確立も計画されています。
目標3:自ら学習・行動し人と共生するAIロボット
出典:内閣府ホームページ
目標3は、「2050年までに、AIとロボットの共進化により、自ら学習・行動し人と共生するロボットの実現」です。
- 人と同等以上の身体能力を持ち、人生に寄り添って一緒に成長するロボットを開発する
- 自然科学の領域において、自ら思考・行動し、自動的に化学的原理・解放の発見を目指すAIロボットを開発する
- 人々の活動が難しい環境で、自律的に判断し、自ら活動し成長するAIロボットを開発する
人々の活動の範囲を現在よりも飛躍的に広げるために、人に代わって自律的に動くロボットが必要であると考えられているようです。
目標4:地球環境の再生
目標4は、「2050年までに、地球環境再生に向けた持続可能な資源循環の実現」です。
地球環境再生のために、持続可能な資源循環の実現による、地球温暖化と環境汚染の問題の解決を目指したものです。
- 温室効果ガスに対する循環技術を開発する
- 環境汚染物質を有益な資源に変換もしくは無害化する技術を開発する
- 資源循環技術を世界的に普及させる
具体的にはCO2の削減やCO2の資源化、プラスチックごみの分解・無害化の実現を目指しているようです。
目標5:2050年の食と農
目標5は、「2050年までに、未利用の生物機能等のフル活用により、地球規模でムリ・ムダのない持続的な食料供給産業の創出」です。
- 微生物や昆虫などの生物機能をフル活用し、完全資源循環型の食料生産システムを開発する
- 食料のムダをなくし、人への健康面と環境に配慮した合理的な食料消費システムを開発する
具体的には食品ロスをなくし、化学肥料や農薬を使わず食物を生産する取り組みが挙げられます。
私たちも食品ロスしないように心がけようと思わされますね。
目標6:誤り耐性型汎用量子コンピュータ
目標6は、「2050年までに、経済・産業・安全保障を飛躍的に発展させる誤り耐性型汎用量子コンピュータの実現」です。
「量子コンピュータ」とは、従来のコンピュータよりも高速計算が可能なコンピュータを指します。
「誤り耐性型汎用量子コンピュータ」とは、ノイズの影響で生じる誤りを自動的に修正して、さまざまな用途に活用できるほどの十分な精度をもつ量子コンピュータを指します。
量子技術の発展によって、情報の安全性やセキュリティ強化の高まりが期待されるでしょう。
情報社会と言われている現在、個人情報などのセキュリティ面が今以上に強化されると、私たちも安心してネットなどを利用できますね。
目標7:健康不安なく100歳まで
出典:内閣府ホームページ
目標7は、「2040年までに、主要な疾患を予防・克服し100歳まで健康不安なく人生を楽しむためのサステイナブルな医療・介護システムの実現」です。
- 日常生活の中で自然に予防ができる社会を実現する
- 世界中のどこにいても必要な医療にアクセスできるメディカルネットワークを実現する
- 健康格差をなくし、負荷を感じずに人々の生活の質を改善する
メディカルネットワークが実現可能になれば、家庭で簡単に検査ができたり、災害時には必要十分な治療が受けられたりできます。私たちにとってもうれしいですよね。
目標8:気象制御による極端風水害の軽減
目標8は、「2050年までに、激甚化しつつある台風や豪雨を制御し極端風水害の脅威から解放された安心安全な社会の実現」です。
年々激しくなっている台風や豪雨の強度やタイミング、発生範囲などを技術開発によって制御します。
そして極端な風水害による被害の大幅な軽減を目標としています。
自然災害の被害が少しでも減ると、私たちも安心して生活できますよね。
目標9:こころの安らぎや活力を増大
目標9は、「2050年までに、こころの安らぎや活力の増大によって、精神的に豊かで躍動的な社会の実現」です。
- こころ豊かな状態をかなえる技術を確立する
- 多様性を重視しつつ、共感性と創造性を高める技術を創出する
- こころのサポートサービスを世界に広く普及させる
新型コロナウイルス感染症の発生により、うつ病や自殺などの精神的要素によって引き起こされる社会問題を早急に解決していく必要があります。
こころのサポートサービスの充実によって、人々が多様性社会の受け入れが可能になり、お互いに寄り添いながら生活できます。
1日でも早く平和な日々が訪れてほしいですね。
まとめ:将来の深刻な問題について正しい情報を知っておこう!
ムーンショット計画の意味や由来、背景や具合的な目標などについて詳しく解説しました。
ムーンショット計画について初めて知った方も多いと思います。
遠い未来の話のようにも感じますが、AIを活用したロボットが使われている企業も増えています。思っているよりも遠くない未来の話です。
将来の生活に期待できる変化
- アバターやロボットの出現による労働環境の改善
- より早い病気の予測や予防
- 資源循環技術の開発による環境問題の解決
- メディカルネットワークの実現による医療・介護システムの改善
- 気象制御による自然災害の被害軽減
- こころのサポートサービスの充実による豊かな社会の実現
今以上に在宅ワークが当たり前になったり、人々が多様性社会を受け入れられるようになったりできるでしょう。
疾患がより早く見つかったり、自然災害時には十分な治療が受けられたりするなど、医療面でも安心して過ごせるようになるでしょう。
このように、ムーンショット計画は私たちの将来に直接かかわる内容です。この記事を読んで少しでも興味を持ってもらえたら幸いです。