プロ野球が好きな人にとっては、シーズンオフのニュースにも関心があると思います。特に、自分のお気に入りの選手が自由契約になった、かつての主力選手が戦力外通告をうけたなどのニュースを見て、ショックを受けた人もいるのではないでしょうか。
この記事は、それらの違いについてとてもわかりやすく書いてあります。この記事を読めば、きっと言葉の違いについて理解できますよ。
【図で解説】プロ野球の自由契約・退団・戦力外の違いとは
3つの言葉の意味について簡単にまとめてみました。
自由契約・退団・戦力外の意味
自由契約 「戦力外通告を受けた選手が、自由に新しい球団と契約を結べる状態」
退団 「様々な事情により選手が所属球団を去る行為」
戦力外通告 「球団が次年度の戦力ではないと選手に通達する行為」
一連の流れを図に示してみました。
図を見ると、球団から戦力外通告を受けた選手が、次年度もプロ野球選手として活躍したいと希望した場合に、自由契約の状態になるのが分かります。次からはより詳しく見ていきましょう。
自由契約とは|選手が自由に新しい所属球団と契約を結べる状態
自由契約について、期間や選手の動きなどについて詳しく見ていきましょう。
自由契約の期間と選手の行動
ここまで見てきたように、球団から戦力外通告を受けた選手が、現役続行の意思表示をすると自由契約選手となります。
戦力外通告を受けても、11月30日までは所属球団の選手です。翌日の12月1日からは、所属球団を退団し自由契約の身分となります。
自由契約になった選手の多くがとる行動を順番にまとめてみました。
自由契約になった選手のとる行動
- 12球団合同トラアイアウトに向けてのトレーニングに励む
- トライアウトを受ける
- 他球団からの合格通知か再テストの通知を受け取る
- 合格通知を受けた選手、再テストを受けて合格した選手は新球団と契約する
そのような場合についても、まとめてみました。トライアウトで通知が何もこなかった選手、再テストに不合格だった選手がとるその後の行動は、次の2パターンのどちらかになります。
トライアウト後に合格をもらえなかった選手
- 自分の伝をたよりプロ野球の他球団にテストを申し込むか、国内の独立リーグや社会人野球チーム、韓国やメキシコなどの海外リーグへの移籍に向けて取り組む。
- プロ野球選手への思いをあきらめる。
プロ野球選手になるを目標として脇目もふらずに突き進んできた野球人生に別れを告げるのは、とてもつらい現実となります。しかし、実力が勝負の世界では、毎年このような厳しい選択をせざるを得ない人も多いのが現実なのです。
関連
自由契約には、怪我などの理由で次年度治療に専念しなければならい選手を一旦自由契約の状態にして、その後育成選手として再契約するパターンもあります。
2021年度の主な自由契約選手
2021年度、日本ハムが西川遥輝外野手、秋吉亮投手、太田泰示外野手の3選手を同時に自由契約とする発表をして大きな話題となりました。今年は不調だったとは言え、過去の実績も十分な3選手への球団が下した決断は、改めて勝負の世界の厳しさを見せつけました。
きょう17日付東京版1面。#日本ハム は16日、海外フリーエージェント(FA)権を保有する西川遥輝外野手(29)と国内FA権を保有する秋吉亮投手(32)、太田泰示外野手(31)の3選手を自由契約とすることを発表。来季の契約を提示せず、契約保留選手の手続きを行いません。#新庄剛志 監督(49)の再建策は…。 pic.twitter.com/S0Hn8QUX4E
— スポニチ東京販売 (@sponichi_hanbai) November 17, 2021
今年日本ハムが行った自由契約は、正式には「ノーテンダー」と言われる大リーグ式のものです。日本プロ野球界で実施されてきた自由契約とは若干異なる点もありますが、選手が他球団と自由に契約できる状態にある点では同じになります。
過去話題となった自由契約選手
2018年巨人の上原浩治投手が自由契約となったのは記憶に新しいですね。シーズン途中に受けた左膝手術の影響もあり、一旦自由契約となった後に、再び巨人と再契約を結びました。しかし、翌2019年にはシーズン途中で引退を表明、復活はなりませんでした。
2014年、阪神の新井貴浩内野手も試合への出場機会が減ったために自由契約となり、古巣だった広島との契約を結びました。移籍した年には華々しい活躍を見せ復活を遂げたのです。
退団とは|所属していた球団から去る行為
次は、退団について見ていきましょう。
退団の時期と行動
戦力外による退団の場合には、シーズンが終了してからの場合が多いです。しかし、トレードなど他の理由により退団する場合もあるため、一概には言えません。
戦力外通告を受けた選手が、退団に至る行動を順番にまとめてみました。
退団に至るまでの選手の行動
- 所属球団から戦力外通告を受ける
- その後の人生について、家族や知人と相談する
- プロ野球選手としての人生に区切りをつけ、新たな人生のスタートに向け準備をする
- 所属球団を退団する
選手が所属球団を退団するケースには、いろいろあります。それらについてまとめてみました。
退団に至る主な理由
- 自由契約選手として、トライアウトを受験したり、テスト入団を受けたりしたが、合格通知を受け取れなかった場合
- プロ・アマ問わず国内外の野球チームへの道を見出そうとしたが、どこからも採用されなかった場合
- 他球団とのトレードが成立した場合
- 年俸などの交渉で合意に至らなかった場合(ほとんど外国人選手)
- プロ野球界から引退する場合
- 傷害事件など契約違反にあたる問題行動を起こしてしまった場合
退団には色々なケースがあるとわかりました。退団と聞くと、プロ野球の世界を去るのイメージを持ってしまうかもしれません。しかし、トレードが成立して所属球団を去る場合も、退団に含まれるのです。
2021年度の主な退団選手
2021年度、ソフトバンクで9勝を挙げ大活躍をしたニック・マルティネス投手が退団するニュースが大きく報じられました。パドレスと約23億円という大型契約を成立させたためでした。外国人選手に退団が多いのは、このように所属球団以外と契約する場合があるからです。
【マルちゃんからのお手紙】
ニック・マルティネス投手より、日本のファンの皆さんへのメッセージが届きました。
MLBでの大・大活躍を願っています!#sbhawks #lovefighters #マルちゃん pic.twitter.com/xxPafLzIxD— 福岡ソフトバンクホークス(公式) (@HAWKS_official) December 29, 2021
他にも、阪神の守護神として大活躍したロベルト・スアレス投手も、パドレスとの契約により阪神を退団しました。巨人の陽岱鋼選手も巨人を退団し、アメリカ独立リーグのレイクカントリー・ドックハウンズへの入団が決定、新しい野球人生をスタートさせます。
過去話題となった退団選手
2020年、阪神の福留孝介選手とソフトバンク内川聖一選手が退団しました。共に、出場機会が大幅に減ったために新たなチャンスを得ようとしたのです。その結果、福留選手は古巣である中日に、内川選手はヤクルトへの入団が決定しました。
2021年度には、二人とも持ち味を発揮した活躍を見せ、2022年度もプロ選手としてのキャリアを継続させます。
2019年には、平成を代表するスーパースターの松坂大輔投手が中日を退団し、古巣の西部に入団しました。松坂投手はその年に引退しましたが、野球人生の最後を古巣である西武で終えたのです。この退団劇は、大勢の野球ファンから温かく受け止められました。
戦力外とは|球団が次年度の戦力ではないと選手に通達する行為
最後は戦力外について見ていきましょう。
戦力外通告の時期と選手の行動
球団が戦力外であると選手に通告する時期は、以下のように2つに分けられています。
- 第1次通告 10月1日からクライマックスシリーズが開催される前日までの期間
- 第2次通告 クライマックスシリーズの全日程が終了した翌日から日本シリーズが終了する翌日までの期間。ただし、日本シリーズ出場チームは、終了から5日間
戦力外通告を受けた選手の多くがとる行動をまとめてみました。
戦力外通告を受けた選手のとる行動
家族や知人、恩人達と今後の進路について相談をしたり、一人で考えたりして進路を決める
選手たちがとる選択は大きく2つに分けられます。
戦力外通告を受けた選手の進路
- トレードなど他球団との交渉を考えるか、トライアウトに参加して、プロ野球選手として活躍できる道を追い求める
- プロ野球選手としての人生に区切りをつけ、新たな人生のスタートに向け準備をする
戦力外通告は、次年度の戦力や契約人数との兼ね合いを見た上で、球団が一方的に選手に伝えるものです。選手にとっては、いつやってくるかわからない非常に怖いものであるのは間違いないといえそうですね。
2021年度の主な戦力外通告選手
2021年度、中日が武田健吾選手に戦力外通告をしたのがSNSで大きな話題となりました。シーズンを通して1軍に帯同していた選手に対する戦力外通告はあまり前例がなかったからです。
中日戦力外の武田健吾「何も考えられない。頭が真っ白」開幕から1軍フル登録、前夜も代打出場#武田健吾#中日ドラゴンズhttps://t.co/5OcJsKJE0e
— 中日スポーツ (@chuspo) October 7, 2021
武田選手はこの後、自由契約を経てトライアウトを受験しました。2022年度は、社会人野球の三菱重工Eastで第2の野球人生をスタートさせます。
他にも、2016年からの広島の3連覇にも大きく貢献した今村猛投手も、球団から戦力外通告を受けました。今村選手は、トライアウトを受験せず他球団からの交渉を待ちましたが、オファーがなく現役引退となりました。
過去話題となった戦力外通告を受けた選手
1982年近鉄(現オリックス)を戦力外となったカズ山本(山本和範)外野手は、バッティングセンターでアルバイトをしながらプロ野球選手としての復活を目指していたのです。念願がかなって1983年南海(現ソフトバンク)に入団すると、翌年から主力として大活躍しました。
1994年には年俸が2億円となり、戦力外からの華々しい復活を遂げた男として注目を浴びました。
もう1人華々しく復活を遂げた選手として名前があがるのが、2012年DeNAから戦力外通告を受け、楽天に移籍した福山博之投手。2017年には年俸1億2000万円となり、こちらも戦力外からの奇跡のカムバックと称賛されました。
最後に忘れてはならないのが、阪急(現オリックス)に入団後、合計4球団を渡り歩いた高木晃次投手。2度の戦力外通告からテストを経て復活を遂げた戦力外の星と言える存在です。2008年に43歳で自己最多登板記録を更新して、永遠の若手と呼ばれるようになりました。
まとめ
野球少年なら誰もが憧れるプロ野球の世界。メディアなどで注目を浴びる華やかな世界の裏側には、去っていく選手も数多くいます。戦力外通告、自由契約、退団と、受け入れがたい現実を突きつけられ、懸命に再挑戦しようとしたり、苦悩にもがき苦しんだりする男達の世界。
毎年こうした選手たちに寄り添った番組が放映されていて、視聴率が高いのもうなずけますね。大勢の元プロ野球選手の皆様が、第2の人生で活躍できるようにエールをおくりたいです。